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遺産分割協議をやり直す場合

遺産分割協議を済ませてしまったあとにやり直したい場合、どのようなことが考えられるのでしょうか?考えられる注意点や必要な手続きについてまとめています。遺産分割協議がやり直せるか否かも事例を参考にみていきましょう。

遺産分割協議をやり直す場合のトラブル事例

やり直しに条件がある遺産分割協議

遺産分割協議をやり直したい場合、主に認められる条件は2つです。1つは相続人全員が遺産分割のやり直しに合意した場合。もう1つが「終了した遺産分割協議が無効だった」と主張できる場合です。

そもそも、遺産分割協議が無効や取り消しになるのはごく稀なケース。一度相続人が遺産分割の内容に合意して協議書に署名捺印すると、原則やり直しがききません。本人が納得して「協議に合意した」とみなされるからです。それでも一部の理由により遺産分割協議の内容に不履行があった場合、協議のやり直しが認められることがあります。

たとえば、「被相続人と前妻との間に子どもがいることがわかっていながら、だまって財産を分割した」といった以下のようなケースは、行われた遺産分割が無効とされ、やり直しが認められます。

  • 相続人の一部を除外して財産を分割した場合
  • 分割時に判明していた相続人や認知した子どもを除外した場合
  • 詐欺や脅迫により分割協議が行われるなど、意思表示に問題があった場合

また、当時は判らなかった多額の財産が新たに見つかるという事例もあります。そのような場合には、相続人全員が合意すれば遺産分割協議のやり直しを行なえます。そして新たに遺産分割協議をすれば、過去の協議で決まった内容は無かったものとみなされます。

協議のやり直しがきっかけで課税対象にも

これまでの遺産分割が「有効」でありながら分割協議をやり直す場合、注意しなければならないことがあります。それは税務上の問題です。遺産を再分割した場合の財産の移動は「相続」ではなく、「贈与」や「譲渡」で発生したものとされ、課税対象になってしまいかねません。

例えば、はじめの遺産分割で持っていた資産の一部を他の相続人に渡すことになった場合、相続人同士の間で「贈与」があったものとみなされ、「贈与税」がかかる可能性があるのです。

遺産分割協議をやり直す場合には、税金面でも注意が必要になってくることを覚えておきましょう。

反対に、これまでの遺産分割が「無効」と認められて協議をやり直した場合、通常と同じ遺産分割協議とみなされて贈与税が発生することはありません。ただし、無効な分割協議によって得た資産分の相続税の申告や納付の後だと、新たに修正申告や更生手続きをしなくてはならないのです。

また、相続人の中に未成年者がいる場合、その未成年者に代わる法定代理人を立てる必要があります。通常の法律行為であれば、両親が該当しますが、遺産相続の場合は親自身も相続人というケースが多いので、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。

このように新しく遺産分割をやり直す際には、新たな申し立てや手続きが必要な場合が多いのです。

後々トラブルにならないために正しい手続きとは?

遺産分割協議の場では、思わぬ手間やトラブルがつきもの。万が一やり直さなくてはいけなくなったとき、すべての手続きを法律に一人で行うのは、時間と労力を要しますし、トラブルに対処するには専門的な知識が必須です。

後々に起こり得る問題の芽を摘み取りながら、協議のやり直しをスムーズに終えるためにも、必ず専門家のアドバイスの下で話合いを進めましょう。特に、相続問題に詳しい弁護士・司法書士を見つけることが大切です。

遺産分割協議のやり直し事例

遺産相続を済ませてしまったあとになって、無効や取り消しにしたいと、協議をやり直すケースはよくあるもの。ここでは、実際に遺産分割協議のやり直しがあったいくつかの事例を紹介していきます。

相続登記後に遺産分割協議をやり直すケース

父が死亡し、遺された兄弟で資産を相続することになったケースでは、当初、農地を兄が相続することで双方合意していました。しかし、遺産分割協議の3ヶ月後、農業をするつもりでいた兄でしたが、事情により農地経営ができなくなってしまいました。そのため、弟が新たに農業に従事することに。

しかし、前回の分配時に相続登記の手続きが済んでいました。そして、遺産分割をやり直した後の贈与税額がいくらになるか分からない、その他にも税金がかかるんじゃないか心配で、遺産分割協議のやり直しに踏み切れていなかったとのこと。

一度、遺産分割協議が成立した場合、相続人の事情が変わったことで分割協議のやり直しをするのは、相続人全員、つまり、兄弟間で合意できれば法律上は何の問題もありません。また、すでに行ってしまった相続登記を「間違いだった」と抹消して弟の名義で相続登記をすることも可能です。

ただし、農地の価格によっては贈与税やその他の税金が課せられる可能性があります。特に贈与税は相続税に比べて税率が高く設定されているため、ある程度の金額を納付する必要があるかもしれません。その際に慌てないようにするためにも、事前に弁護士や税理士へ相談しましょう。

遺産分割のやり直しで課税されないのは、はじめの遺産分割協議が無効とみなされたときのみ。無効だった場合は、そもそもの遺産分割協議自体が成立していないことになり、やり直したときにも通常の遺産分割とみなされます。

分割協議書に署名捺印した後にやり直したいケース

遺産分割協議で大まかに合意し、分割協議書に署名捺印を済ませたものの、あとになってやり直したという事例もあります。

相続人は被相続人の長男Aと次男B、その他にC、D、Eと計5人がいました。遺産分割協議がまとまり、被相続人名義の土地はAが取得することに。協議後に署名捺印して無事に終了していたのですが、後になって諸事情から「その土地は次男のBが継いだ方がいいのでは?」とC、Dより意見が持ち上がったのです。

A、B、Eの3人もそれに異存なく合意。「やっぱり相続人をBに変更したい」となりました。しかし、土地の名義変更(相続を原因とする所有権移転登記)をすでに済ませてしまっていたそうです。

このケースでもで続人全員が、分割協議のやり直しに合意しているので、法律上の問題はありません。しかし、前回の協議が有効であるため、土地の所有権移転に伴い、AからBへの財産の贈与があったとみなされるので、Bに納税義務が発生します。

また、土地の所有権を被相続人からAに移転登記した後、再度所有権を移動させる場合、一度Aの所有権登記を抹消してからBに移さなくてはなりません。所有権抹消登記か更生登記を行い、Aの所有権を抹消してからBへ名義を変更することになります。さらに贈与税のほかに登記申請に伴う登録免許税も発生。改めて登録免許税を納め直さなければいけません。

遺産分割協議とは、一度合意して成立すると、そのあとのやり直しは「変更する」のではなく「解除して再協議する」というのが法律上の通念です。贈与税は税率が高いため、合意による遺産分割協議をやり直す際には慎重に行なわなくてはなりません。まずは相続の専門家と話して最善策を聞いてみましょう。

二次相続する際に隠し財産が発覚し遺産分割協議のやり直しを求めるケース

遺産相続をする際に、二次相続が関わる複雑なケースもあります。元々相続人の母が死亡したため、生前に母が相続していた祖父の資産を子どもが相続することになりました。

生前の母は気付いていなかったものの、実は祖父の遺産相続は平等に行なわれておらず、財産の一部を母の妹である叔母が隠し持っていたことが発覚したのです。しかもその財産の一部はすでに使われてしまった後だったのだそう。

母の相続人である子が祖父の相続分を二次相続することになるため、母の相続人全員が当事者になるこのような事例では、遺産分割協議のやり直しはできるのでしょうか?

ここでは、専門家の意見が2つに分かれています。祖父の遺産分割協議を行った当時とは別の財産が新たに発見されたのだから、あらためて追加の遺産分割協議ができるという意見と、分割協議のやり直しはできないという見解です。

ただし、「やり直しができる」という見解は、あくまで未分割の遺産があることを資料が明示できる場合のみ。「やり直しができない」という見解については、隠し財産について追加の分割協議を行なうのが妥当だという考えです。

その場合は無効や取り消しを訴えずに新しく分割協議を行う手続きをとります。また、専門家によればこの事例の場合、無権限で取得した遺産の使い込みを理由に「不当利得返還請求」を行える可能性が高いのだとか。その場合、遺産分割協議のほかに返還請求の手続きも必要です。

複雑なケースなど、場合によっては専門家の間でも意見が分かれることがあり、複数案がでることもあります。最善策で進められるように、自分の状況を複数の専門家に相談してみるのもおすすめです。自分の納得する方向でスムーズに遺産分割協議を終えられるように準備しましょう。

他の相続人が財産の一部を隠していたことが発覚したケース

残念な話ですが、遺産相続の際に出てくる「隠し財産」の問題は、被相続人が隠しているパターンだけではなく、「ある特定の相続人が遺産を独占しようとして隠していた」というケースもあるそうです。

相続人の中には、均等に分割すべき財産を黙って隠しておいて、自分以外の者が相続できないようにし、独り占めしたいという考えを起こす人もいるのです。

遺産分割がまとまった後、協議書へのサイン、名義変更や相続税の申告も終わり、日が経ってから財産が隠されていたと発覚した場合、遺産分割協議のやり直しはできるのでしょうか?

遺産分割協議において「新たに相続財産が見つかった」場合には、すでに成立したはじめの遺産分割協議が有効で、新しく発見された分だけを再分割するというのが法律上の考え方です。

隠されていた相続財産を再び分配するだけにして、相続人すべてが納得するのであれば「新しく見つかった遺産だけを分割する」という方法で分割協議を治められます。しかし、そもそも隠されていた財産の存在を知らなかった他の相続人が、当初からその財産の存在を知っていれば、はじめの遺産分割協議内容では納得しなかったはずです。

このような事例の場合には、成立した当初の遺産分割協議を「錯誤による無効」と主張できる可能性があり、遺産分割協議のやり直しに発展することが考えられます。

当初の相続ですでに相続税の申告が済んでいる場合には、修正申告をせざるを得ません。また隠されていた相続財産に追徴税や延滞税が課せられることもあります。さらに隠されていた財産が税務署の税務調査で見つかった場合は、過少申告加算税までもが課せられたという事例もあるようです。

遺産分割協議に錯誤があり承諾してしまったケース

自分の身内である兄弟の嘘を見抜けず信じてしまったために不公平な分割になってしまったケースです。

父の遺産を子どもである兄弟で分割することになり、生前から父の財産を管理していた兄が遺産分割協議書を作成したのだそう。兄が「平等に2分の1ずつ分割した協議書を作成したのでサインしてほしい」という言葉に対し、弟は「それなら」と承諾して署名捺印してしまったのです。

その後、兄が取得した不動産と株式に、分割当時に伝えられていた金額よりも高い評価額がついていたことが発覚。加えて兄は父から生前贈与を受けていて全く平等な分割ではなかったことが発覚したというものです。

このケースは遺産分割協議自体、無効という判断が下される可能性が高いです。遺産分割協議は共同相続人による相互の意思表示方法なので、「もし、このことが分かっていたらはじめの遺産分割協議には応じなかった」というような「錯誤があった」と言える場合には、一旦は成立した遺産分割協議であっても無効になるのです。

あらかじめ価値が解っていた不動産や株式、生前贈与で取得した財産など、ここでいう兄弟の相続分は兄と弟で大きく異なることになります。兄から提示された遺産分割協議を信じてしまっただけで、はじめから財産がすべて見えていれば、兄が提示した条件では遺産分割協議書にサインしなかったでしょう。

これは「要素の錯誤」にあたるとみなされ、遺産分割協議は無効になります。また動機が相手によって表示されているかも明らかにしなくてはなりません。相手の「平等に分けたから合意してほしい」という言葉を聞いて協議に承諾していた場合には、弟の動機は兄によって表示されたとみなされ、錯誤無効を主張するtことができます。

相続が開始してから2年経っているがやり直し請求をしたいケース

内縁の夫が亡くなってしまって相続手続きをした母の娘による相談事例です。

この母親は長い間、被相続人の家族に虐待されていて、遺産分割協議で取得した財産も他人に言われるまま譲り渡ししてしまった後に亡くなってしまいました。その後2年が経過してから娘がそのことに気づき、譲ってしまった財産を返却してもらいたいと考えています。

遺産分割協議のやり直しで取り戻すことはできるのでしょうか?また、法律上で定められた権利が侵害されていると知ったときにも、遺産分割協議を無効にすることはできるのでしょうか。

答えは「いいえ」です。すでに譲り渡してしまった財産を返却してもらえるかどうかは、譲渡した本人の問題。相続協議が終わり、手続きが完了した後の財産を第三者に譲ったことになるので、遺産相続とは全く別の扱いです。

事情があり、譲渡したことを無効・取り消したい場合、主張できるのは相続したあとに譲渡してしまった本人のみ。よって母から譲り受けた財産の返還が望み薄。一方で相続人は自分の相続する権利を侵害されたことを知ってから5年間は「相続回復請求権」によって、相続回復を請求する権利があります。

しかし、このケースは被相続人と相続人(母親)が内縁関係であるため、法定相続人とは認められず、様々な権利の主張が難しいのです。

母親が遺産を相続してから2年なので、もしこれが正式な婚姻関係のもとに起きたのであれば、相続回復請求権利が行使できます。相続回復請求ができるのは、相続権を侵害されていることを知った日から5年以内です。また相続開始を知った時から20年以内に請求権を行使しない場合は時効となり失効してしまいます。

遺産分割をやり直したために贈与税を課されたケース

父から土地を相続したA、Bという兄弟。分割が出来ない土地だったため、Aは土地を相続する代わりにBに相続予定だった土地の価値分の現金を支払うという形で遺産分割協議し、双方が合意しました。

土地を売却した内の一部をBに渡すつもりだったAでしたが、その土地は予想していた価格では売れず、相続税の納付すら難しくなってしまったのです。Bは土地分の代金を受け取れないだけでなく、Aが延滞している分の相続税も課されることになってしまいました。

このように、他の相続人が滞納している相続税は連帯納付しなければならないと義務付けられており、これを「連帯納付義務」といいます。

さらにこの事例には続きがあります。Aによる相続税の連帯納付から免れたかったBは、他の共同相続人に代償金を払う代償分割を解消すればAによって発生した連帯納付を払わなくて済むと考え、Aと合意の上で遺産分割をやり直しました。

しかし税務上はBが相続で受け取ったの財産を全てAに贈与したものとみなされ、贈与税が課せられてしまったのです。その結果、相続税より税率の高い贈与税の納付を強いられることになってしまいました。

この後の裁判でも取り消しは認められず、Bは贈与税だけを支払う結果に。遺産分割協議が完了した後の場合、一定の条件に当てはまらなければ容易には無効や取り消しにはならないことがわかります。

遺産分割のやり直しが贈与として扱われると贈与税も発生。慎重に行なわなければ予想もしなかった高額な納税を迫られる可能性があるのです。遺産分割協議をやり直したい場合には、自分がどの状態に当てはまるのか慎重に確認しなくてはなりません。

相続放棄をしたあとに遺産分割協議をやり直したケース

強固なものだと思っていた兄弟関係が、遺産分割をきっかけに壊れてしまうようなことも少なくありません。これは、分割協議の合意解除ができるかどうかで方向が変わったある事例です。

母が亡くなり、長兄から「兄弟で分けるほど大した遺産がないので自分だけが相続する。黙って協議書に署名捺印してほしい」と申し出られたため、それを信じて相続放棄をすることに合意して判を押した相続人。後日長兄の説明とは異なり、多額の財産が遺されていたことが判明しました。

残りの相続人は長兄の対応に納得がいかなかったため、遺産分割協議のやり直しを求めることに踏み切ったそうです。

被相続人の遺産が多額だと知りながら、相続放棄を迫ったこのケースでは詐欺・錯誤として認められる可能性が高いでしょう。はじめの遺産分割協議書に記載された財産内容とは別の、記載のない「その他の財産」で大きな説明の違いがあれば確実に錯誤による遺産相続と主張できます。

例えば協議書に書かれている遺産内容よりも、「微々たるもの」と説明を受けていた、「その他財産」の方がが主体または多額であった場合です。この場合は長兄が意図的に財産の存在を隠していたとみなされます。

兄弟間と他のすべての相続人同士で分割協議のやり直し合意があれば再協議もできますが、応じてくれない場合には長兄から他の相続人に対して詐欺・錯誤の事実があったと明らかにして家庭裁判所に調停の申し立てを行なった方が良いでしょう。

ここで注意しなければならないのは、相続放棄は正規の手続きを終えた後は、原則として取り消しや撤回が出来ない点です。詐欺または脅迫によるものであった場合には取り消しが認められますが、放棄した日から10年以内、且つ追認できる日から6ヵ月以内と決められているので遺産分割協議が行われた日をよく確認する必要があります。

遺産分割協議中に相続人が死亡したケース

遺産分割協議は相続人全員で行うものと決められており、1人でも欠けた状態で行われた遺産分割協議は無効とみなされます。

ただ、必ずしも一堂に会する必要はなく、郵送で送られた協議書の内容を理解して合意し押印、印鑑証明書を添付して再度郵送するといった方法で遺産分割協議の意思表示と承認を証明することが可能です。相続人同士が遠方に住んでいたり、相続人同士の関係が薄かったりする場合などに、このような郵送による方法がよく用いられます。

一方で、遺産分割の最中に相続人が死亡してしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。

相続人が死亡してしまった場合、遺産分割の地位を相続して「相続人の相続人」が遺産分割協議に参加することができます。

このように相続分割中に再度相続が生じることを「数次相続」と言います。相続人が高齢だった場合など、遺産分割協議中に一部の方が死亡してしまうことは相続協議中によく見られることです。数次相続が発生すると、これまで進めていた遺産分割の話し合いが振り出しに戻ってしまう可能性があります。

また元来の相続人よりも関係が希薄な方の数次相続が多いため、話し合いにくく分割協議の内容も複雑になる傾向に。数次相続を多発させないためにも、遺産分割協議は出来るだけ早く行なうことをおすすめします。

ちなみに数次相続の場合、同じ財産に対して2度の課税や2重課税を避けるため、第一相続と第二相続が10年以内に発生したときには2度目に課せられる相続税から1度目分の相続税を一定額控除する制度も。数次相続を行なう可能性のある方は知っておくと良いですね。

遺産分割協議が無効・取り消しになる?

遺産分割協議は、以下の条件で無効や取り消しになる場合があります。ここでいう無効や取り消しとは、一見、条件を満たして有効に遺産分割が終了したように見えたものの、実際には法律で定められた取り消しにあたる行為のことです。取り消しの意思表示をすることによって無効とみなされます。

  • 相続人の一部による遺産分割協議
    遺産分割協議は原則、相続人全員が参加して行わなくてはなりません。また、相続人以外の第三者が参加することもできません。これに反して行われた協議分割は無効となります。
    ただし、相続開始後に認知された人がいて、相続人が新たに増えた場合、当時の被認知者が参加していなかったとしても分割協議は無効とはならず、後に金銭的な調整を行なうことが認められています。
  • 詐欺・脅迫を原因とするもの
    詐欺や脅迫によって合意された遺産分割は取り消しが可能です。例えば他の相続人から、事実とは異なる分割内容を告げられて協議してしまった場合や、脅されて遺産分割に合意した場合などです。
  • 錯誤によるもの
    いわゆる「勘違い」による遺産分割協議です。被相続人が遺言を残していたことを知らずに遺産分割協議を行っていたとして、もし遺言の存在を知っていれば当時の内容で分割協議には応じなかったという場合などに無効を主張できます。

有効だと思っていた協議が民法上の法律行為により、無効にあたるケースもあります。すでに行ってしまった後に、遺産分割協議のやり直しをしたいときは、法律に詳しい専門家に今の状況や細かい事情を話してみてはいかがでしょうか。

遺産分割協議のやり直しで気を付けたいこと

遺産分割をやり直した際に注意しておきたい点は2つ。贈与税の発生と資産、主に不動産の名義変更です。税法上では、はじめの分割協議で相続が完了したことになるため、遺産分割協議をやり直した際の財産分割は、「相続人同士で財産の移転が行われた」と扱われ、その行為が財産の贈与や譲渡とみなされます。

贈与税は一般的に相続税より税率が高いので注意が必要です。また、登記が必要な資産=不動産の所有権を移すため、「名義変更」も必要。名義変更にともない不動産取得税や登録免許税の納税も発生するので、一度は税理士に相談したほうがよいでしょう。

遺産分割協議をやり直した後の税金は?

贈与税や譲渡所得税が必要

遺産分割協議をやり直すと、税法上ではすでに相続が完了したものの再分配とみなされます。そのため、相続した人に対する贈与または譲渡があったと判断され、再協議で取得した財産に贈与税や譲渡所得税がかかります。やり直す前の相続手続きが済んで相続税を支払っていた場合も、やり直したあとに贈与税がかけられてしまうため注意が必要です。

不動産所有権の移転も必要

登記が必要な不動産の遺産分割でも注意点があります。通常通りに法定相続されていた不動産の場合は、相続による取得とみなされ不動産取得税はかかりません。しかし、遺産分割協議をやり直した結果の所有権移転では、元々相続した人の所有権移転登記を抹消し、改めて所有権移転登記をします。

この方法で不動産の名義変更を行なうと、相続ではなく譲渡で不動産を取得したとみなされ、不動産取得税が課せられてしまいます。

課税を視野に入れて慎重に

遺産分割協議をやり直したときに贈与税や譲渡取得税、不動産取得税がいくらかかるかを事前に調べておきましょう。せっかく納得いく結果になったとしても、後になって高額な税金が課せられ、支払えなくなってしまったというケースもよくあるものです。

やり直せば遺産が多く手元に入るという「プラスの面」だけを見るのではなく、やり直すことによって発生する税金面もきちんと考慮して協議にのぞむことが大切です。

遺産分割協議のやり直しが起こらないようにするためには

遺産分割協議をやり直すことになると新たな手続きが発生するだけでなく、税法上での問題が多くなります。出来るだけやり直しがおこらないような分割協議をしておきたいものですよね。できる限り1回で遺産分割協議を終えられるようにするために、気を付けたいことをまとめました。

寄与分を考慮しておく

相続人のうち、生前の被相続人の財産維持や増加などに貢献した人や、療養介護など特別に寄与していた人が得る利益を「寄与分」といいます。

寄与分を考慮して遺産分割をしておくと、後から「お爺ちゃんの介護は私がしたのに、その分が考慮されてない」などともめることが少なくなります。協議の際には、相続財産の全体から最初に寄与分だけを差し引いておきます。残りの遺産分割後に、寄与した人にはその分をプラスするというやり方で分配するのが一般的です。

特別受益を考慮して分配する

被相続人から生前贈与を受ける、または「遺贈」として財産を受け取ることを特別受益と言います。相続開始以前に本来の「遺産」として受け取れる財産の一部を、受け取っているため、これも分割協議の際に考慮しておくべきです。

もし、被相続人が遺言書で「特別受益は含まない」という意思表示を遺している時は、遺言者の意思が優先されますが、そのようなケースを除き、遺産分割にあたってこれを考慮せずに分割しようとすると、相続人の間で揉める原因になってしまいます。特別な人に特定の財産を相続したい場合は遺言を残しておく、あるいは残しておいてもらうのがベストです。

全ての相続財産を把握しておく

遺産を相続する前に、的確に相続財産を把握しておくことも重要です。預貯金の残高証明書や株などの有価証券はもちろん、生命保険契約や損害保険契約、不動産まで相続が起きる財産の全てを把握しておきましょう。

預金に関しては被相続人が管理している預金口座が、実際には妻や子の名義になっていることなどがあります。実質的に被相続人自身の財産と推定される預貯金にも注意が必要です。被相続人自身か、同居する相続人などであらかじめ「財産リスト」を作成しておくとよいでしょう。

遺産分割のやり直しで税務上の問題を発生させないためにも、相続財産の把握を的確に行なっておくのは大切です。

【必読】財産を隠されていたら?

意外と起きやすい隠し財産

隠し財産は思わぬところで発生します。家族や親族の中に被相続人の財産を隠し持ったまま、逃げてしまう人があらわれるかもしれないのです。

例えば長年実家の近所に暮らし両親の近くに住んでいた兄弟と、実家から離れて遠方で暮らしていた兄弟では資産状況の把握に差があることが多いものです。

万が一その兄弟に遺産の一部が勝手に流れていたことが発覚すると、遺産分割協議から調停や裁判にまで発展してしまうことがよく見受けられます。

兄弟の誰かが高齢の親の財産を管理していることはよくあること。しかしこのような方法で被相続人の財産を管理するのはあまり好ましいことではないのです。

遺産隠しを個人が証明するのは困難

もし「遺産隠しが起きているかもしれない」と気づいたとしても、それを個人が証明することは簡単ではありません。多くは現金の預貯金で、すでに被相続人の口座から別の口座に移しかえられていることが多く、はたまた別の資産に組み変わっていることもあるのです。

そうなると、個人の力で遺産隠しを調べるのはほぼ不可能と言ってよいでしょう。このようなケースでよく利用されるのが遺産分割調停です。家庭裁判所に対し調停の申し立てを行ない、調査嘱託を申請することで裁判官に調査してもらうことができます。

遺産隠しは税務署に見抜かれる

もし相続人の誰もが遺産隠しに気づかなかったとしても、税務署の調査官に突き止められてしまいます。税務署は相続税申告のあと、被相続人以外の全ての相続人や親族の口座を調べあげるもの。たとえ相続人の誰かが直前に多額の現金を別の口座に移し替えたとしても、税務調査によって暴かれてしまいます。

そうなると、遺産分割のやり直しが発生するのはもちろん、相続人は修正申告を迫られ、追加納税を課されてしまうのです。他の相続人にも迷惑がかかってしまうため、遺産を隠そうと企むのは絶対にやめるべきです。

生前のうちに顧問税理士に依頼して財産を正確に把握・管理してもらう、兄弟の誰かが管理するのではなく後見人に財産を管理してもらうなどの方法で遺産隠しを予防しておきましょう。遺産分割協議のやり直しや泥沼化して調停・裁判にまで発展してしまわないためにも、前もって対策をしておくことが大切です。

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